統計問題必勝講座
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過去10年で出題された統計問題
どんな問題が出るのかご紹介します。昨年までの10年間分を出題回数順に並べました。毎年以下の8項目から4つが選ばれ4択問題となります。
| 出題項目 | どんな統計? | 出題回数 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 新設住宅着工戸数 | 1年間で新築された住宅の戸数 | 9回 |
| 2 | 地価動向 | 地価の変動率 | 9回 |
| 3 | 不動産業統計 | 1年間の不動産業の売上や利益等 | 8回 |
| 4 | 土地取引件数 | 1年間に売買された土地の件数 | 7回 |
| 5 | 宅地建物取引業者数 | 年度末の宅建業者数 | 3回 |
| 6 | 土地利用動向 | 地目別の土地面積 | 2回 |
| 7 | 不動産価格指数 | 不動産価格の2010年との比較 | 1回 |
| 8 | 宅地供給量 | 1年間で新たに宅地化した土地面積 | 1回 |
8番目の「宅地供給量」については、公式発表がなくなって出題される可能性は極めて低いため扱いません。
統計問題の対策法
シンプルです。
数値は覚えず、前年との増減のみ暗記
例えば、「H28年末の宅建業者数は123,416業者で前年と比べ増加した…」と問題にあったとき、H28をH27としたり、123,416を122,416としたりして誤りの肢として出題するようなことはありません。ですから年や数字を覚える必要はありません。
その根拠は次の2点です。
根拠①
過去10年の統計問題で1年を除いてすべて、増減を知っているだけで解答できました。その1年は前々年との増減まで知る必要がありましたが、この年の試験は、消費税増税のため不動産の売買数に影響が出た翌年を問う問題でしたから、増税された年の前後の増減は当然に着目すべき暗記事項でした。この必勝法でも暗記事項になっていましたので全く問題なく正解できました。特別に押さえておくべきポイントがある年とない年がありますが、あれば一つ二つ覚えるだけですから、やはり対策法としては増減を覚えることと断言できます。
根拠②
宅建士に求められる能力から考えても、細かな数字を記憶しておく意味は皆無です。宅建業者が何万業者いるかなんてことを知っていて、実務で何の役に立つというのでしょう。大きな流れを知っておく程度で十分です。つまり、試験作成者サイドの立場に立てば、数字だけで判断させる問題は作りにくいということです。
以上より対策法としては、数字の増減のみを覚え、特別に押さえるべきポイントがあればそれを覚えればよいということになります。
ただしこの必勝法では、増減のことを「上下」で表します。「上下」の方が直感的にイメージしやすく、実際に講義するときも指で「上下」を示せるので教えやすいのです。
変動が無い場合は横ばいと表現されますが、必勝法では「中」とします。
実際の問題で必勝法を確認
昨年度(平成29年度)の本試験で、実際に必勝法を確認してみましょう。解説だけ見てもらえればOKですよ。
問題肢1
平成29年地価公示(平成29年3月公表)によれば、住宅地の公示地価の全国平均は、9年連続で下落した。
解説
× 下落ではなく横ばいです。
問題肢2
建築着工統計(平成29年1月公表)によれば、平成28年の持家の新設着工戸数は約29.2万戸となり、3年ぶりに増加に転じた。
解説
○ 増加です。
問題肢3
平成29年版土地白書(平成29年5月公表)によれば、土地取引について、売買による所有権移転登記の件数でその動向を見ると、平成28年の全国の土地取引件数は129万件となり、2年連続の減少となった。
解説
× 減少ではなく増加です。
問題肢4
平成27年度法人企業統計年報(平成28年9月公表)によれば、平成27年度における不動産業の経常利益は約4兆3,000億円となっており、前年度比7.5%増となった。
解説
× 増加ではなく減少です。
数字を一切覚える必要がないことがわかりますね。
どこを暗記するか
統計問題では大原則として、その統計に関して公式発表された文言がそのまま使われます。例えば「全国の地価が前年と比べて増加した」と公式発表があれば、これを元に「全国の地価は前年と比べて減少した。〇か×か」みたいな問題ができるわけです。
逆に言えば、宅建試験作成者サイドは、公式発表がなければ問題を作ることができません。数値しか公式発表されていないならそもそも問題は作れないということです。例えば公式発表で「今年の宅建業者数は〇〇でした」としか発表されなかったとしたら、増減が述べられていないので宅建業者数に関する問題は作れないということです。
絶対とは言えませんが、試験作成者が独断で増減を判断することを避けているように思います。ですから公式発表にある増減のコメントを中心に覚えていくのが得策です。
2018年度試験の特別必勝法
今年度の試験では、必勝法はさらにカンタンになります。
各項目の解説を見ていただければわかりますが、ほとんどの項目で「増減」は「増」です。すなわち「上」です。なので統計問題全体に関して何を聞かれても「上」を基本として、「上」以外で特別覚えなければならないことだけ暗記すればいいのです。
ですから、次を基本として各解説を進めます。
2018年度は基本的に「上」
各統計の解説
1.新設住宅着工戸数
どんな統計?
「新築された建物の数」です。新築された建物の利用目的として、①持家、②貸家、③分譲住宅の3つに分けて集計されます。このうち③分譲住宅は㋐マンションと㋑一戸建てに分けて集計されます。
例えば、①全国の㋑住宅地が値上がりしてるとか、②三大都市圏の㋑商業地が値下がりしてるなんてことがわかるわけです。
公式発表
公式発表(H29建築着工統計より)をもとに表にしました。増減だけに着目しましょう。青のマスは増加、赤のマスは減少です。
| 利用目的 | ①住宅 | ②貸家 | ③分譲住宅 | 分譲住宅のうち | 総戸数 | |
| ㋐マンション | ㋑一戸建住宅 | |||||
| 着工戸数 | 284,283 | 419,397 | 255,191 | 114,830 | 138,189 | 964,641 |
| 前年比 | 2.7%減 | 0.2%増 | 1.9%増 | 0.2%増 | 3.3%増 | 0.3%減 |
| 増減の詳細 | 昨年の増加から再びの減少 | 6年連続の増加 | 3年連続の増加 | 昨年の減少から再びの増加 | 2年連続の増加 | 3年ぶりの減少 |
完全暗記事
覚えることはこれだけです。
持家と総戸数が「下」
他はすべて「上」
練習問題
(1)建築着工統計(平成30年1月公表)によれば、平成29年の持家の新設着工戸数は約28.4万戸となり、前年の減少から再びの増加となった。
解答を見る
(1)×
持家は「下」だから誤り。
(2)建築着工統計(平成30年1月公表)によれば、分譲住宅の着工戸数は、マンション、一戸建住宅ともに2年連続で前年に比べ減少している。
解答を見る
(2)×
持家と総戸数以外はすべて「上」なので誤り。
(3)建築着工統計(平成30年1月公表)によれば、平成29年の新設住宅着工戸数は、平成28年と比較すると減少した。
解答を見る
(3)〇
新設住宅着工戸数とだけ言われた場合は総戸数のことです。総戸数は「下」なので正しい。
2.地価動向
どんな統計?
前年と比べて土地の価格がどれだけ増減したかを表したものです。まず土地を①全国、②三大都市圏、③地方圏と地域別に分けて、そこからさらに用途別に㋐住宅地と㋑商業地に分けて価格の増減を公表したものが地価動向です。
例えば、「①全国の㋑商業地が値上がりしてる」などがわかるわけです。
公式発表
地価動向では公式発表(平成30年地価公示より)で概要と詳細が公表されます。詳細は数字だらけで読む気がしないので、わかりやすく表にまとめました。完全暗記のところで覚えやすくまとめてありますからご安心を。
全国平均 : 住宅地の平均変動率が10年ぶりに上昇に転じた。商業地及び全用途平均は、3年連続で上昇。
三大都市圏 : 住宅地・商業地ともに各圏域で上昇。大阪圏は、住宅地はわずかな上昇だが、商業地の上昇率は三圏で最も高い。
地方圏: 住宅地は下落幅縮小が継続。商業地は26年ぶりに上昇に転じ、全用途平均でも下落を脱した。
詳細はコチラ。単位は%で、表の青マスは上昇、赤マスは下落、緑マスは横ばい(「中」とします)です。例えば全国平均で住宅地は0.3%価格が上昇したってことですね。
| 用途別 | 全用途 | ||||||
| ①住宅地 | ②商業地 | ||||||
| H29 | H30 | H29 | H30 | H29 | H30 | ||
| ①全国平均 | 0 | 0.3 | 1.4 | 1.9 | 0.4 | 0.7 | |
| ②三大都市圏※ | 0.5 | 0.7 | 3.3 | 3.9 | 1.1 | 1.5 | |
| ③地方圏 | △0.4 | △0.1 | △0.1 | 0.5 | △0.3 | 0 | |
※東京・大阪・名古屋のことです。
完全暗記
基本「上」です。概要の「地方圏の住宅地は下落幅縮小」だけは「縮小」まで暗記です。
地方圏の住宅地は「下」≪縮小≫
地方圏の全用途平均は「中」(=横ばい)
その他の地域は「上」
練習問題
次の各文章の正誤を判断せよ。
(1)平成30年地価公示(平成30年3月公表)によれば、平成29年1月以降の1年間の地価は、地方圏では、住宅地はわずかに下落しているものの下落幅は縮小しており、全用途平均では昨年までの下落から横ばいに転じた。
解答を見る
(1)〇
地方圏の住宅地は「下」≪縮小≫でその通り。また、全用途平均も「中」(=横ばい)だから正しい。
(2)平成30年地価公示(平成30年3月公表)によれば、平成29年の1年間の地価変動率は、全国平均で見ると全ての用途で3年連続で下落したが、住宅地では10年ぶりに上昇した。
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(2)×
「下」は地方圏の住宅地のみ。よって全国平均は「下」ではないから誤り。ちなみに全国平均の住宅地は「上」なので正しい。
(3)平成30年地価公示(平成30年3月公表)によれば、平成29年の1年間の地価は、三大都市圏の住宅地において下落したが、商業地においては上昇となった。
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(3)×
「下」は地方圏の住宅地のみ。三大都市圏の住宅地も「下」ではないので誤り。
3.不動産業統計
どんな統計?
不動産業全体の売上や利益等です。過去10年で出題されたのは次の2点です。
①売上と経常利益の前年度との比較(9回/10回)
②経常利益率の全産業との比較(1回/10回)
ほぼ、①が出題されてますね。
売上と経常利益について
コンビニに例えましょう。このコンビニオーナーは副業もやってるとします。売上とはコンビニのレジに入ってきたお金全部です。売上から仕入れのお金や人件費を引いたものを営業利益といいます。そして営業利益に副業の利益を加えたものを経常利益といいます。
公式発表
公式発表(平成28年度法人企業統計年報)より宅建試験に関する部分のみ抽出して表にしました。
①売上高と経常利益の前年度比
| 平成27年度 | 平成28年度 | 前年比 | |
| 売上高 | 39兆3,835億円 | 42兆9,824億円 | 0.091%増 |
| 経常利益 | 4兆3,014億円 | 5兆3,318億円 | 0.24%増 |
売上も経常利益も「上」ですね。不動産業は儲かってるようです。
②利益率の全産業との比較
| 平成27年度 | 平成28年度 | 全産業との比較 | |
| 売上高経常利益率 | 10.9% | 12.4% | 2年とも「上」 |
売上高経常利益率とは、売上に対して経常利益がどのくらいかってことです。これが高いってことは、売上に対して懐に入るお金が多いってことですから、儲け率が高いってことですね。不動産業は前年より増加し、全産業と比べても「上」です。
完全暗記事項
売上高も経常利益も前年比は「上」、
経常利益率は前年比も「上」、全産業比も「上」なので、
何を聞かれても「上」
練習問題
次の各文章の正誤を判断せよ。
(1)平成28年度法人企業統計年報(平成29年9月公表)によれば、平成28年度における不動産業の売上高は約43兆円と対前年度比で9.1%減少し、2年連続で減少した。
解答を見る
(2)×
何を聞かれても「上」なのだから誤り。
(2)平成28年度法人企業統計年報(平成29年9月公表)によれば、平成28年度における不動産業の経常利益は約5兆3,000億円となっており、前年度比24%増となった。
解答を見る
(2)〇
何を聞かれても「上」で、問題は「上」の記述なので正しい。
(3)平成28年度法人企業統計年報(平成29年9月公表)によれば、平成28年度の不動産業の売上高経常利益率は、前年度と比べて低下し、全産業の売上高経常利益率よりも低くなった。
解答を見る
(3)×
何を聞かれても「上」なのだから誤り。
4.土地取引件数
どんな統計?
一年間で売買された土地の件数です。
公式発表
公式発表(平成30年版土地白書)で次のように発表がありました。「売買による所有権の移転登記の件数」というのがまさに「売買された土地の件数」のことです。
(土地取引件数等の推移)土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向をみると、 法務省「登記統計月報」によれば、平成 29 年の全国の土地取引件数は132 万件となり、前年に比べると 2.1%増となった。 増加の内訳は、地方圏で約2万件、東京 圏で約1万件となった。
完全暗記事項
過去10年で、全国の土地取引件数の増減以外は出題されていません。過去にも増加の内訳等は発表されていましたが出題されたことはないです。というわけで
土地取引件数は「上」
練習問題
次の各文章の正誤を判断せよ。
(1)平成30年版土地白書(平成30年6月公表)によれば、土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向を見ると、平成29年の全国の土地取引件数は前年に比べると2.1%減少となった。
解答を見る
(1)×
土地取引件数は「上」なので誤り。
(2)平成30年版土地白書(平成30年6月公表)によれば、土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向を見ると、平成29年の全国の土地取引件数は132万件となり、前年に比べ増加した。
解答を見る
(2)〇
土地取引件数は「上」なので正しい。
5.土地利用動向
どんな統計?
平成28年の地目別(土地の利用目的別)の面積です。宅建試験としては、特に宅地面積の増減が問われます。過去2回の出題では、ともに宅地面積の増減を問う問題でした。
公式発表
公式発表(平成30年版土地白書)より。
平成 28 年における我が国の国土面積は約 3,780 万 ha であり、このうち森林が約 2,506 万 ha と最も多く、それに次ぐ農地は前年より減少して 447 万 ha となっており、 これらで全国土面積の約8割を占めている。このほか、住宅地、工業用地等の宅地は 約 194 万 ha、道路は約 139 万 ha、水面・河川・水路が約 133 万 ha、原野等が約 34 万 ha となっている。
完全暗記事項
宅地の増減に関するコメントはありませんが、前年の宅地は約193万haなのでわずかに増加です。
宅地は「上」
練習問題
次の各文章の正誤を判断せよ。
(1)平成30年版土地白書(平成30年5月公表)によれば、平成28年の住宅地、工業用地等の宅地は、全国で約194万ヘクタールあり、昨年と比べ減少した。
解答を見る
(1)×
宅地は「上」なので誤り。
(2)平成30年版土地白書(平成30年5月公表)によれば、平成28年末の住宅地、工業用地等の宅地は減少傾向にあり、全国で約194万ヘクタールとなっている。
解答を見る
(2)×
宅地は「上」なので誤り。
6.宅地建物取引業者数
どんな統計?
そのまんま宅建業者数です。宅建業者数の前年との比較が出題されます。
公式発表
公式発表(平成29年度国土交通白書)より平成28年度末の宅建業者数は123,416業者。
完全暗記事項
今回の国土交通白書には、前年との比較コメントはありませんでしたが、3年連続で増加しています。数字はムシしますので、
3年連続の増加
練習問題
(1)平成29年度国土交通白書(平成30年6月公表)によれば、平成29年3月末時点の宅地建物取引業者数は123,416業者となっており、3年連続で減少した。
解答を見る
(1)×
宅建業者数は「上」なので誤り。
(2)平成29年度国士交通白書(平成30年6月公表)によれば、平成29年3月末現在の宅地建物取引業者数は約12.3万業者となっており、近年、微減傾向が続いている。
解答を見る
(2)×
宅建業者数は「上」なので誤り。
7.不動産価格指数
どんな統計?
2010年の不動産価格を100として現在の価格を数値化したものが発表されます。H27年度の宅建試験で初めて登場しました。
公式発表
公式発表(H30年3月不動産価格指数)よりグラフを作成しました。公式発表として増減のコメントはなく、不動産価格指数の出題可能性は低いでしょう。
完全暗記事項
マンションだけ上昇しています。本試験でもこの点に着目して「マンションは近年上昇基調」と出題されました。上昇基調なので完全暗記事項は「上」です。
マンションは「上」
練習問題
国土交通省が毎月公表する不動産価格指数(住宅)のうち、全国のマンション指数は、リーマンショックが発生した年である2008年以降2018年3月まで一貫して下落基調となっている。
解答を見る
解答
×
マンションは「上」なので誤り。
まとめ
完全暗記事項
試験当日は、この表だけは完全暗記してまず問48を解きましょう。
| 項目名 | 出題回数 | 完全暗記事項 | |
| 1 | 新設住宅着工戸数 | 8回 | 持家と総戸数が「下 」 他はすべて「上」 |
| 2 | 地価動向 | 7回 | 地方圏の住宅地は「下」、地方圏の全用途平均は「中」(=横ばい) その他の地域は「上」 |
| 3 | 不動産統計 | 6回 | 何を聞かれても「上」 |
| 4 | 土地取引件数 | 5回 | 「上」 |
| 5 | 土地利用動向 | 2回 | 宅地は「上」 |
| 6 | 宅地建物取引業者数 | 2回 | 「上」 |
| 7 | 不動産価格指数 | 1回 | マンションは「上」 |
今年はほとんどの項目で「上」なので、「下」と「横ばい」の項目のみ着目すればOKです。ただし地価動向の「下落幅縮小」は縮小まで覚えてください。
一応暗記事項
過去10年で一度も試験に出たことはないですが、一応暗記しておきたい項目です。
時間がない人は「完全暗記事項」だけでOKですよ。
| 項目名 | 一応暗記事項 |
| 地価動向 | 大阪の商業地は三大都市圏のうち「上」率トップ |
| 不動産統計 | 売上高営業利益率は前年より「下」 (それでも全産業と比べると「上」) |
| 土地利用動向 | 農地が「下」 |
| 不動産価格指数 | マンション以外は「中」(=横ばい) |
※売上高営業利益率も公表されていますが、こちらが試験に出たことはありません。しかし、前年より下がっている点が懸念されるので一応紹介しておきます。
